ひどく風の匂い

弘明寺健太のブログ

再会

小沢健二の、シングルとしては19年ぶりという「流動体について/神秘的」を聴いた。
テレビ出演などメディアの表舞台にも久しぶりに登場するとあって、ネットでは新曲のサウンドや歌詞について色んな解釈が飛び交い盛り上がっているようだけど、そんな状況も楽しく見ている。
僕自身の感想としては、音作りにしても歌詞にしても、昔と変わらない誠実さにやはり胸を打たれた。そう、オザケンの音楽が今でも多くの人たちから支持されている理由は、この「誠実さ」にあるのだと思う。一読しただけでは難解なその歌詞も、繰り返し読んでいるうちに、1曲の中に長い長い時間が優しく流れているような、そんな感覚を自然と感じさせてくれる。自分の心情をあらわすため言葉を、本当にひとつひとつ丁寧に選んでいるのだと思う。
お馴染みのバックミュージシャンやアレンジャーの面々といい、歌詞にちりばめられた過去の曲へのさりげないオマージュといい、もう往年のファンにとっては涙が出そうな今回のリリースだけど、ジャケットの写真に対する本人のコメント「子どもの後ろを歩いている、僕自身の視点です」に象徴されるような、今現在オザケンが立っている場所とその心境を垣間見るにつけ、人生の中のひとつの味わいである「時を経ての再会」というテーマをこんな風に提示してくれたことに、ああ、ありがとうと素直に思うのでした。
ひょっとしたらもう二度と会うことはないかもと思っていた人に何十年か後に思わず出会ったり、そんな不思議なことが起こるのが人生。自分もすっかりオッサンになって(因みに僕とオザケンは同い年なのです)本当にそういう経験をすることが増えてきた。


映画「男はつらいよ」のエンディング。恋に破れた寅さんが行商先の田舎町で、偶然ばったりとかつての仲間に出会うという、あのお決まりの、だけど素敵すぎるシーン。山田洋次は人生をよく分かっている。
意外にも、そんなことを思い出したのでした。

 

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